ラオスにおける投資優遇制度
2016年6月9日更新
ラオスにおける事業活動を目的とする投資に対する主な優遇措置は、投資奨励法に基づき規定されている。この投資優遇措置には、最長10年間にわたって法人税の全額免除される等、他のASEAN諸国のそれと比較しても、相当有利な条件が定められているように思われる。したがって、ASEANへの進出を検討する際には、ラオスの優遇措置を自社でどこまで享受できるかを検討しておくことは、有意義ではないかと思われる。
本稿は、かかるラオスの投資優遇措置の1.根拠法令、2.主な要件及び3.内容について記載している。本稿は、経済特区外における一般事業向けの投資を対象とした優遇措置を念頭に記載されており、経済特区内の優遇措置については、別の検討が必要になる点には留意されたい。
なお、投資優遇措置は、政策変更や予算等により変更されることが少なくない分野であり、具体的に検討する場合には専門家又は所轄官庁に最新の内容を確認することが特に重要であると思われる。
- 1. 根拠法令
 - 2. 優遇措置の主な要件
 - 3. 優遇措置の主な内容
 - (1) 法人税の免除
 - (2) 輸入関税・輸入税の免除
 - (3) 輸出税の免除
 - (4) 欠損金の繰越
 - (5) 土地利用権の取得
 - (6) 医療・教育分野における特別の優遇措置
 - ・ ゾーン1:15年間
 - ・ ゾーン2:10年間
 - ・ ゾーン3:3年間
 
ラオスにおける投資活動に対する優遇措置を定める一般的な法令として、投資奨励法(ກົດໝາຍ ວ່າດ້ວຍການສົ່ງເສີມການລົງທຶນ ສະບັບເລກທີ 02 /ສພຊ ລົງວັນທີ 8 ກໍລະກົດ 2009。以下「投資奨励法」という。)及びその下位規範が存在している。同法は、国内投資奨励法(10/NA、 2004年10月22日)及び外国投資奨励法(11/NA、 2004年10月22日)に代わるものとして制定された。
投資奨励法が定める優遇措置を享受するためには、投資奨励法の下位規範(以下「投資奨励法施行令」という。)が別紙においてリスト化している「投資奨励事業」のいずれかに該当する必要がある。当該リストに記載されている12の事業分野とその主な小分類の概要は以下のとおりである。
| (a) 農業分野 | 
|---|
| 動物・作物の育成、狩猟、及びこれらに関連するサービス | 
| 漁業・水産養殖 | 
| 動物の健康に関する事業、動物・水生生物に関する事業 | 
| 動物の調査・研究 | 
| 農業 | 
| (b) 情報・文化事業分野 | 
| 出版 | 
| 映画・ビデオ・テレビに関する事業 | 
| 公共放送 | 
| 美術 | 
| 大衆文化 | 
| (c) 観光分野 | 
| (d) 能力開発、人材紹介分野 | 
| 職業紹介、雇用創出 | 
| 人材派遣 | 
| 人材開発 | 
| (e) 郵便・通信分野 | 
| コンピュータ・プログラミング、コンサルティング等 | 
| 情報サービス事業 | 
| 郵便・宅配事業 | 
| (f) 教育分野 | 
| 正規教育 | 
| 職業教育 | 
| 高等教育 | 
| 非正規教育 | 
| (g) 健康分野 | 
| 健康管理サービスの実施 | 
| (h) エネルギー分野 | 
| (i) 製造・加工分野 | 
| 衣服の製造 | 
| 皮革製品の製造 | 
| 木材の加工・製造 | 
| 紙・紙製品の製造 | 
| コークス・石油精製製品の製造 | 
| 化学製品の製造 | 
| プラスティック・プラスティック製品の製造 | 
| 非金属鉱製品の製造 | 
| 組立金属製品の製造 | 
| コンピュータ、電子機器、光学製品の製造 | 
| 測量機器等の製造 | 
| 機械・設備の製造 | 
| 宝石・宝石関連製品の製造 | 
| 電気・ガス等の供給 | 
| 上下水道、ごみ処理等の事業 | 
| 廃棄物の収集・保管等 | 
| (j) 公共事業・運輸分野 | 
| 自動車・トレーラー・牽引設備の製造 | 
| 貨物・荷物の運搬 | 
| 内水輸送、海上輸送、沿岸輸送 | 
| (k) 科学技術分野 | 
| 情報・通信、書籍・雑誌その他の出版事業 | 
| 通信 | 
| 建築・エンジニアリング事業、技術的検査・分析 | 
| 科学的研究開発 | 
| 職業・科学・その他技術に関する事業 | 
| (l) スポーツ・体育分野 | 
リストにおいて規定されている各投資奨励事業は、政府における課題の重要性、貧困削減への寄与度、住民の生活環境の改善度合い、インフラの建設、人材開発、雇用創出の度合い等を考慮して、以下の3つのレベルに区分されている。
レベル1:最高レベルの奨励措置を受けうる事業
レベル2:中間レベルの奨励措置を受けうる事業
レベル3:低いレベルの奨励措置を受けうる事業
リストに記載されている具体的な投資奨励事業はかなり多岐に渡っており、その詳細については専門家又は監督省庁に確認されたい。
投資奨励法に定められた奨励措置の主な内容としては、(1) 法人税の免税、(2) 輸入関税・輸入税の免除、(3) 輸出税の免除、(4) 欠損金の繰越、(5) 土地利用権の取得、(6) 医療・教育分野における特別の優遇措置がある。以下、順に紹介する。
法人税の免税期間は、①前記2.に記載した各投資奨励事業ごとに定められた3つのレベル、及び②投資奨励法施行令において区分された以下の3つの地域(ゾーン)の組み合わせにより、以下のとおり決定されるのが原則である。
| 
 法人税免税期間 
 | 
 投資奨励事業の優先レベル 
 | 
|||
|---|---|---|---|---|
| 
 レベル1 
 | 
 レベル2 
 | 
 レベル3 
 | 
||
| 
 投資地域の区別 
 | 
 ゾーン1 
 | 
 10年 
 | 
 6年 
 | 
 4年 
 | 
| 
 ゾーン2 
 | 
 6年 
 | 
 4年 
 | 
 2年 
 | 
|
| 
 ゾーン3 
 | 
 4年 
 | 
 2年 
 | 
 1年 
 | 
|
ゾーン1:社会経済的なインフラが整備されていない地域。
ゾーン2:社会経済的なインフラが部分的に整備されている地域。
ゾーン3:社会経済的なインフラが整備されている地域。
投資奨励事業が病院・学校・研究センターなどの開発又は公益事業に該当する場合は、上記の免税期間は5年間延長される。
また、免税期間は原則として企業が事業活動を開始した日から始まるが、新製品の生産や新技術の開発の場合は利益が発生した年から開始する。ただし、事業開始から3年以内に新製品・新技術として認定されない場合は、遡って事業開始日から計算されるため注意を要する。
さらに、法人税免税期間終了後、純利益を事業拡張のために再投資した場合、当該純利益の額が全純利益に占める割合に応じて、翌会計年度における法人税が減免される。
工場・建物の建設及び生産に直接用いられる原材料・設備・機械・部品・車両の輸入に関する輸入関税及び輸入税は、認可された年間輸入計画に基づき免除されうる。
一般的な商品及び製品の輸出に関する輸出税は免除されうる。ただし、天然資源及び天然資源を用いて生産された製品の輸出は、適用法令を遵守する必要がある。
損失を計上した場合、その損失をその後3年間にわたり繰り越して各会計年度に生じた利益と相殺することができる。
登録資本金が50万米ドル以上の外国投資家は、居住又はオフィス用建物の建設を目的として、800平方メートル以下の土地の利用権を政府から購入する権利を有する。
投資奨励事業が病院・学校・研究センターなどの開発又は公益事業に該当する場合については、その事業が存在するゾーンの区分に応じて、以下の期間、借地料の免除を受けることができる。
加えて、上記(1)の法人税免税期間が5年間が伸張される。
以上
