インド労働法③
2024年11月更新
Ⅲ.社会保障に関する法規①
1948年インド従業員州保険法(Employees’ State Insurance Act, 1948)
1.規定内容
1948年インド従業員州保険法は、主に病気、妊娠・出産、及び労災により従業員が就業不能となった場合における給付金を規定する目的で制定されたものです。
2.適用対象
インド従業員州保険法は、10名以上の従業員を雇用している季節稼働ではない工場、及び10名以上(一部の州は20名以上)の従業員を雇用している店舗、ホテル、レストラン、映画館、道路運送業、新聞社、保険業者、ノンバンク、港湾、空港、及び倉庫施設及びその従業員に適用されます。なお、月額21,000ルピーを超える賃金を受領している従業員、及び月額25,000ルピーを超える賃金を受領している身体障害を持つ従業員には適用されません。
3.具体的内容
- (1) 保険金の負担
インド従業員州保険法に基づき、従業員州保険基金(Employees’ Statement Fund)が設立され、同法の適用対象となる従業員及びその雇用主は、当該基金に対し保険金を支払わなければなりません。具体的には、従業員がその賃金の0.75%を保険金として負担し、雇用主が当該従業員に対する賃金の3.25%を保険金として負担しなければなりません。なお、一日の賃金が176ルピー以下の従業員は、上記の保険金の負担を免除されています。但し、この場合であってもその雇用主の保険金の負担は免除されません。 - (2) 主たる雇用主(Principal Employer)の責任
主たる雇用主は、直接又は直接の雇用主(例えば、請負業者)を通じて雇用した従業員に関する保険金を支払う義務を負います。したがって、従業員の直接の雇用主が保険金の支払いを怠った場合には、主たる雇用主が直接の雇用主に代わってその保険金を支払わなければなりません。保険金を期限までに納付しなかった場合、主たる雇用主は、納付されるまで未納保険金につき年利12%以上の利息支払義務を負うことになります。
4.罰則
雇用主が、本法に基づき支払義務を負う負担金を納付しない場合、当該雇用主に対する罰則として、1年以上3年以下の禁固及び10,000ルピー以下の罰金が規定されています。また、再犯の場合における刑の加重についても規定されています。
1923年インド従業員補償法(Employees’ Compensation Act, 1923)
1.規定内容
1923年インド従業員補償法は、就業中の事故によって従業員が負った傷害及びそれに基づく就労不能に対する雇用主による補償金の支払いを規定しています。
2.適用対象
インド従業員補償法は、同法のSchedule IIに規定されるすべての従業員に対して適用されます。なお、1948年従業員州保険法の適用対象となっている従業員には、本法は適用されません。
3.具体的内容
- (1) 雇用主の補償義務
雇用主は、就業中の事故によって従業員が傷害を負った場合、その従業員に対し、原則として補償金を支払う義務を負います。もっとも以下の場合、雇用主は補償金を支払う義務を負いません(同法第3条)。- ① 全治3日を超える全面的又は部分的就労不能の結果をもたらさない傷害の場合
- ② 飲酒・薬物使用、故意による安全規則違反、又は故意による安全措置の除去等に直接起因する事故による傷害であって、死亡又は恒久的全面的就労不能の結果をもたらさない場合
- (2) 補償額
インド従業員補償法は、以下の場合につき雇用主が支払うべき補償金額を規定しています(同法第4条)。
| 当該傷害から死亡に至った場合 | 月額賃金の50%に所定の係数を乗じた金額、又は12万ルピーのいずれか大きい額 |
| 当該傷害から恒久的全面的就労不能に至った場合 | 月額賃金の60%に所定の係数を乗じた金額、又は14万ルピーのいずれか大きい額 |
| 当該傷害から恒久的部分的就労不能に至った場合 | ①Schedule I第2部に規定されている傷害の場合 恒久的全面的就労不能の場合の補償額に上記規定の収入能力損失割合を乗じた額 ②Schedule Iに規定されていない傷害の場合 恒久的全面的就労不能の場合の補償額に資格を有する医師によって診断された収入能力損失割合を乗じた額 |
| 当該傷害から一時的就労不能に至った場合 | 所定の方法に従って月額賃金の25%に相当する額を月2回支払う(但し、最長5年間) |
4.罰則
雇用主が、本法に基づく補償金支払義務の履行を不当に遅滞した場合、当該雇用主に対して罰則によって追加の補償金支払義務を課すことができる旨規定されています。具体的には、年利12%(又は政府が通達によって示した銀行の借入金利の最高利率)の遅延損害金及び補償額の50%以下の罰金が規定されています。
以上
