ベトナムにおける投資優遇制度

2016年12月31日

 ベトナムにおける中心的な優遇措置は、2014年に改正され、2015年7月1日から施行されている投資法(67/2014/QH13。以下「新投資法」という。)に基づく優遇措置である。その特徴の1つは、かかる優遇措置の申請・承認のプロセスが、外国人投資家がベトナムで事業を開始する際に原則として取得する必要がある投資証明書の取得手続において行われる点である。以下では、かかる投資優遇制度に関し、1.根拠法令、2.投資奨励対象プロジェクト、及び3.奨励措置の主な内容について紹介する。

 なお、投資優遇措置は、政策変更や予算等により変更されることが少なくない分野であり、具体的に検討する場合には専門家又は所轄官庁に最新の内容を確認することが特に重要であると思われる。

  1. 1. 根拠法令
  2.  ベトナムにおいては、ベトナムへの投資を促進するための優遇措置を定める主な法令として、新投資法が存在し、投資優遇の対象となる業務分野等の具体的な内容については、その下位規範である政令第118/2015/ND-CP号(以下「政令118号」という。)に規定されている。

  3. 2. 投資奨励対象プロジェクト
  4.  新投資法によると、奨励投資措置を受けることができる対象は、(1) 奨励投資分野の投資プロジェクト 、(2) 奨励投資地域における投資プロジェクト、(3) 6兆ドン(約312億1760万0000円)以上の資本規模の投資プロジェクトで、投資登録証明書の発給を受けた日または投資方針の決定日から3年以内に少なくとも6兆ドンを出資するもの、(4) 農村地帯において500名以上の労働者を雇用するプロジェクト、及び(5) ハイテク企業、科学技術企業および科学技術組織、の5つと定められている。(1)、(2)について、以下、詳述する。

  5. (1) 投資奨励対象業務分野
  6.  投資奨励を受けることのできる業務分野として、新投資法上定められている13の業務分野の概要は、以下のとおりである。

     (a) ハイテク活動、ハイテク補助工業製品、研究開発活動

     (b) 新素材・エネルギー・クリーンエネルギー・再生エネルギーの生産、付加価値が30%以上ある製品・省エネルギー製品の生産

     (c) 電子製品・重機・農業機械・自動車・自動車部品の生産、造船

     (d) 繊維・皮革及び上記(c)に定められた各製品のための補助工業製品の生産

     (e) 情報技術・ソフトウェア・デジタルコンテンツ製品の生産

     (f) 農産物・林産物・水産物の養殖・加工、森林の植栽・保護、製塩、漁業のための物流サービス、動植物の種・バイオテクノロジー製品の生産

     (g) 廃棄物の収集・処理・リサイクル・再利用

     (h) インフラストラクチャーの開発・運営・管理、公共旅客運送手段の開発

     (i) 幼児教育・普通教育・職業教育

     (j) 医学的な診察・治療、医薬品・その原料・ワクチン・薬草・漢方薬の生産、新薬製造に役立つ製剤技術・バイオテクノロジーの科学研究

     (k) 障害者・アスリートのためのスポーツ施設、文化遺産の保護・活用

     (l) 枯葉剤の患者治療センター、老人ホーム、メンタルケアセンター、高齢者・障害者・孤児等の養護センター

     (m) 人民信用基金、小規模金融機関

  7. (2) 投資優遇地域
  8.  投資奨励を受けることのできる地域として、新投資法上定められている投資優遇地域の概要は、以下のとおりである。

     (a) (経済・社会状況が)困難な地域及び特に困難な地域

     (b) 工業団地、輸出加工区、ハイテクパーク、経済特区

    このうち経済社会状況が困難な地域及び特に困難な地域については、政令118号の別表2において、各省ごとに具体的な地域が指定されている。

  9. 3. 奨励措置の主な内容
  10.  新投資法においては、奨励措置の内容として、以下のものが定められている。

     (a) 一定期間内又は投資プロジェクトの実施期間内全てにおける、法人所得税に対する軽減税率の適用又は免除・減額

     (b) 投資プロジェクトを実施するための原材料・消耗品・部品・固定資産を設置するために輸入した商品に対する輸入税の免除・減額

     (c) 土地の賃貸/使用料・土地に係る税の免除・減額

以上