タイ事業からの撤退

2016年12月13日更新

1.現地法人の撤退方法

 タイ現地法人の撤退方法には、①現地法人の清算、及び②株式の譲渡の2つの方法が考えられる。本項では、①現地法人(非公開株式会社)の清算手続を中心に説明を加える。

 なお、合弁企業を設立する場合は、パートナーとなる現地法人と十分な交渉を行ったうえで、進出段階から合弁契約中に撤退に関する条項を盛り込んでおくことが望ましい。

2.会社の清算

  1. (1) 適用される法律
  2.  会社の解散事由は民商法第4章第8節において規定され、現地法人の清算手続は同法第5章で規定されている。

  3. (2) 会社の解散
  4.  ア 解散事由

     会社は、解散する旨の株主総会特別決議があったときや、会社が破産したときなどに解散する。

     イ 裁判所による解散命令

     裁判所は、会社が登記後1年たっても業務活動を開始せず若しくは1年以上にわたって活動しなかった場合や、会社の事業活動について再建の見込みがない場合などに、解散を命じる。

  5. (3) 会社の清算手続
  6.  以下では、会社が株主総会特別決議によって解散する場合の清算手続について述べる。なお、破産した会社の清算手続は破産法の定めに従う。

     ① 会社を解散する旨の株主総会特別決議

     株主総会特別決議は、議決権を有する出席株主の議決権数の4分の3以上の多数をもって行われるほか、決議を2度行う必要がある。

     ② 清算人の選定

     清算人は、会社の業務整理、債務清算、資産分配等を行う。会社が破産以外の事由で解散するときは、定款等に別段の定めがない限り、取締役が清算人となる。但し、清算人がいない場合は、検察官または債務における利害関係人の申立てにより、裁判所が清算人を選任する。

     ③ 商務省解散登記・清算人登記

     清算人は、解散決議から14日以内に、会社の解散及び全清算人の氏名を商務省に登記しなければならない。

     ④ 新聞広告及び会社債権者への通知

     清算人は、解散登記の日から14日以内に、新聞で解散公告を行うとともに、債権者に書留郵便を郵送して解散の通知を行わなければならない。

     ⑤ 清算貸借対照表の作成及び監査

     清算人は、速やかに清算貸借対照表を作成するとともに、会計監査人による監査を受ける。

     ⑥ 株主総会の招集及び承認

     清算人は株主総会を招集し、当該株主総会において清算人の確認や清算貸借対照表等の承認を受ける。

     ⑦ 清算状況の報告

     清算人は、3カ月に1回、商務省に清算状況を報告する。また、清算人は、清算手続が1年以上にわたって行われる場合、各年度の終わりに株主総会を招集するとともに、当該株主総会で清算状況を報告しなければならない。

     ⑧ 株主総会における清算完了の承認

     清算人は、清算事務が完了次第、清算の経緯及び会社財産の処分状況に係る報告書を作成し、株主総会を招集した上、当該株主総会において承認を得なければならない。

     ⑨ 商務省清算完了登記

     清算人は、株主総会において清算完了の承認を得た日から14日以内に、商務省において清算完了の登記をしなければならない。清算手続は、当該登記をもって完了する。

以上