シンガポールにおける会社の清算・倒産

2016年12月26日更新

 シンガポールにおいて会社の倒産処理に用いられうる主な手続としては、清算型の手続として①任意清算(Voluntary Winding-up)及び②強制清算(Winding-up by Court)、再生型の手続として③更生管財手続(Judicial Management)及び④スキーム・オブ・アレンジメント(Scheme of Arrangement)、担保権実行の手段としての⑤保全管理(Receivership)が存在しており、これらの制度は主として会社法(Companies Act、以下「会社法」という。)及びその下位規範において規定されている。

 上記の制度のうち①任意清算は、破産状態にない現地法人が様々な理由からシンガポールから撤退する場面においても広く用いることができる便利な制度である。本稿では、シンガポールにおける会社清算及び任意清算の制度について解説する。

  1. 1. 会社清算
  2.  会社清算とは、会社の債務を支払うために、会社資産を回収し処分する手続であり、清算手続が完了すると、原則として会社は解散し、その法人格は消滅することになる。

     会社法に規定されている会社清算の方法は、大きく分けると、①裁判所の関与が限定的で株主・債権者が手続を主導する任意清算(Voluntary Winding-up)と、②裁判所が手続を主導する強制清算(Winding-up by Court)の2種類に分けることができる。以下では、任意清算について検討する。

  3. 2. 任意清算
  4. (1) 任意清算の開始
  5.  任意清算の手続は、通常の場合、任意清算を行う旨の株主総会決議により開始する。任意清算は、清算手続開始後12ヶ月以内に会社債務を全て弁済できる見込みがあるか否かによって、(a) 株主による任意清算(Voluntary Winding- up by Members)(b) 債権者による任意清算(Voluntary Winding-up by Creditors)という2つの異なる手続に分けられる。以下、順に紹介する。

  6.  (a) 株主による任意清算
  7.  清算手続開始後12ヶ月以内に会社債務を全て弁済できる見込みがある場合には、まず、取締役会の多数決により、上記の見込みがある旨の支払能力宣言書を作成し、ACRA(Accounting and Corporate Regulatory Authority)に対してその登記申請を行う。その後、清算決議を行うための株主総会の招集通知を株主に対して発送する。

     株主総会においては、特別決議により、会社を任意清算する旨を決定する。任意清算は、会社が株主総会において任意清算の決議をした時点で開始する。かかる株主総会において、合わせて清算人を指名する。

  8.  (b) 債権者による任意清算
  9.  会社が、清算手続開始後12ヶ月以内にその債務を弁済することができない場合、清算決議を行った株主総会の後、債権者集会を開催する必要がある。かかる債権者集会の招集通知は、債権者集会の7日前までに各債権者に送達し、かつ、シンガポールで流通する新聞に公告をする必要がある。債権者集会においても清算人が指名され、かかる清算人が株主総会とは異なる者である場合には、債権者集会で指名された者が清算人となる。

  10. (2) 任意清算開始の効果
  11.  任意清算の開始により、会社にとって営業を続けることが有利であると清算人が考える場合を除き、会社はその事業を停止する。会社の法人格及び権利能力は、解散まで存続する。

     また、任意清算の開始後は、清算人の許可がない限り、株式を譲渡することはできず、これに反してなされた譲渡は無効となる。

  12. (3) 会社清算の公告
  13.  会社清算が決議された場合には、会社は、決議から7 日以内にACRAに対し、会社清算の登記を申請しなければならず、決議から10日以内に、シンガポールで流通する新聞に会社清算を公告しなければならない。

  14. (4) 債権額の確定・会社財産の換価
  15.  清算人は、各債権者に対して、証拠を添付して債権届出を行うように求め、届出られた債権について認否を行う。また、清算人は、競売・私人との契約等により、会社財産の売却・換価を行う。

  16. (5) 会社財産の分配
  17.  担保権を有する債権者は担保権を実行し、優先的にその全額を自己の債権に充当することができる。その残余の会社財産は、以下の順位で、優先債権者間で分配される。

    1. (i) 会社清算にかかった費用
    2. (ii) 会社の従業員の給与その他報酬
    3. (iii) 会社の従業員に対する退職手当
    4. (iv) 雇用の過程で生じた損害賠償金
    5. (v) 一定の老齢退職年金・退職慰労金の枠組みの中で支払われるCPF の会社負担分
    6. (vi) 一定の年次休暇に対して従業員に支払われる給与
    7. (vii) 一定の租税

     優先債権者への弁済の後の会社財産は、一般債権者に対してその債権額に応じて按分で弁済され、全ての債務を弁済した後は、会社の定款に従い、株主に対して分配される。

  18. (6) 最終会議の開催
  19.  清算人は、清算手続が全て完了した後、清算についての計算書を作成し、最終の株主総会(債権者による任意清算の場合は、株主総会と債権者集会)を招集する。これらの最終会議の招集は、会議の1ヶ月以上前に、少なくともシンガポールで発行される英語・マレー語・中国語・タミル語の新聞各1 紙以上において、公告しなければならない。

  20. (7) 会社の解散
  21.  清算人は、最終会議の後7 日以内に、最終会議開催の登記をACRAに申告する。かかる登記がされた日から3 ヵ月が経過したときに、会社は解散する。

    以上