シンガポールにおける現地法人の運営

2016年12月15日更新

 非公開有限責任株式会社の必要的機関は、原則として、①取締役・取締役会、②株主総会、③会社秘書役及び④会計監査人である。

 本稿では、日系企業がシンガポールで現地法人を運営する上で重要と思われる会社の機関に関連する規律について、実務上用いられることが多いと思われる非公開有限責任株式会社(以下「有限会社」という。)を前提として、その原則的な必要的機関である、以下の5つにつき検討する。

 1. 取締役

 2. 取締役会

 3. 株主総会

 4. 会社秘書役(Company Secretary)

 5. 会計監査人

 以下の記載は、主として、2014年に改正された会社法(Companies Act、以下「会社法」という。)に基づいている。なお、有限会社の設立に関する規律については、本ウェブサイト国際コンテンツ内の「シンガポールにおける事業拠点の設置」を参照されたい。

  1. 1. 取締役
  2.  取締役は、その指示及び監督に基づいて、会社の事業経営を行う機関である。取締役は、法令・定款において株主総会が権限を行使すべきと定められている事項以外の全ての権限を有する。

     有限会社の取締役の人数は、最低1名で足りるが、取締役のうち1名はシンガポールの居住者である必要がある。居住者としての要件を満たす者とは、所轄官庁であるACRA(Accounting and Corporate Regulatory Authority)によると、シンガポール国籍保有者、シンガポールの永住権保有者、シンガポールの就労ビザ(Employment Pass)保有者で、外国人労働者の雇用に関する法律についての法令を遵守することを条件として、シンガポールの居住取締役として認められるとされており、具体的に何日以上シンガポールに滞在しなければならないという規定は存在していない。

     取締役の選任は、定款にこれに反する定めがない限り、株主総会の普通決議により行うことができる。取締役の資格としては、18歳以上の自然人である必要がある。また、有限会社の取締役の任期及び解任要件については、会社法上は規定が無く、定款において定められることが一般である。

  3. 2. 取締役会
  4.  取締役会の招集手続・定足数・決議要件については、会社法上定めがなく、定款に規定されることが一般である。したがって、定款に規定した手続を履践することにより、取締役会を電話会議又はテレビ会議により開催し、又は、書面により取締役会決議を行うことも可能であると解されている。

     取締役会の議事録については、取締役会開催後1ヶ月以内に作成し、当該取締役会における議長又は次回取締役会の議長が署名をする必要がある。

  5. 3. 株主総会
  6.  株主総会は、会社法上定められた重要事項について意思決定を行う機関である。株主総会には、主として、毎年開催される定時株主総会と、必要に応じて開催される臨時株主総会の2種類がある。

     定時株主総会は、原則として、1年に最低1回の開催が必要で、また、直前の定時株主総会から15ヶ月以内に開催する必要がある。加えて、有限会社の場合、当該定時株主総会開催日の6ヶ月前までに終了する会計年度についての財務諸表を提出する必要があるため、原則として、会計年度末から6ヶ月以内に開催される。

     臨時株主総会の開催は、定款において、取締役会がこれを決議することができる旨を定めることができる。また、自己株式を除く発行株式総数の10%以上を合計で保有する2名以上の株主の請求がある場合にも、臨時株主総会が開催される。

     株主総会の定足数は、定款に規定がない場合、株主が1名の会社を除き、2名以上の株主の出席が必要である。株主が1名の会社は、会社法の規定に従って決議内容を記録化し、当該記録に株主が署名することにより、決議を行うことができる。

     株主総会の普通決議は、株主総会に出席しかつ決議に参加した株主の過半数の賛成により可決される。主な普通決議事項は、以下のとおりである。

    1. ・ 増資
    2. ・ 取締役に対する一定の貸付・報酬等の支払
    3. ・ 一定の会計監査人に対する報酬等の支払

     株主総会の特別決議は、株主総会に出席し議決に加わる株主の4分の3以上の賛成により可決される。主な特別決議事項は、以下のとおりである。

    1. ・ 定款の変更
    2. ・ 商号の変更
    3. ・ 減資
    4. ・ 合併
    5. ・ 任意清算

     また、有限会社においては、定款に禁止する旨の規定がない限り、全株主の署名による株主総会の書面決議を行うことができる。ただし、この場合、議決権の5%以上を有する株主は、決議書面の受領後7日以内に、会社に株主総会の開催を求めることができる。

  7. 4. 会社秘書役(Company Secretary)
  8.  会社秘書役は、法令上必要とされる会社の登記及び議事録等の管理を主たる業務とする機関である。有限会社は、最低1名の会社秘書役を任命する必要がある。

     会社秘書役は、主たる住所をシンガポールに有する自然人であり、会社秘書役の業務について必要な知識・経験を有する適切な者を任命する必要があるが、有限会社の場合、会社法上、資格要件は定められていない。また、取締役が1名の会社は、当該取締役は会社秘書役を兼任することはできないため、注意が必要である。

     会社秘書役は、取締役会によって選任される。会社秘書役の不在期間は6ヶ月を超えることはできず、会社設立の際には、設立後6ヶ月以内に任命する必要がある。

  9. 5. 会計監査人
  10.  会計監査人は、取締役が作成する財務諸表について、株主に対して監査報告を行うことを主たる業務とする機関である。2016年1月3日から全面的に施行されたシンガポールの改正会社法により、以下の要件のうちいずれか2つを満たす小会社(small company)は、監査義務が免除され会計監査人の設置が不要とされている。

     (i) 年間売上高が1,000万シンガポールドル(約8億6000万円)以下

     (ii) 純資産額が1,000万シンガポールドル(約8億6000万円)以下

     (iii) 従業員数が50名以下

     会計監査人は、株主総会の普通決議により任命される。会社設立の際には、設立後3ヶ月以内に任命する必要がある。会計監査人の解任も、株主総会の普通決議事項であるが、当該解任案を提出する者は、当該株主総会開催の28日以上前に会社に対して特別通知を行う必要がある点には、注意が必要である。

     会計監査人は、監査報告において、会社の財務諸表が会社法及び会計基準に準拠しているかについて、意見を表明する。また、会計監査人は、職務遂行の過程で、当該会社が会社法に違反している事実を確認し、監査報告にその旨を記載し取締役に通知することによっても十分な対応がなされないと判断した場合には、登記官に対して当該違反の事実を通知する必要がある。

    以上