フィリピンにおける投資優遇制度

2016年10月更新

 フィリピンにおいては、国内の重要産業への投資を奨励するために各種の投資促進法を制定しており、他のASEAN諸国に劣らない優遇措置が採用されている。

 その中でも、利用する日本企業が多く、かつ、利用価値も高いと思われるPEZAの優遇措置を中心に具体的な解説を加える。

 ここでPEZAの概略に少し触れておくと、PEZAとは、フィリピンの中央政府の傘下にある経済特区庁の名称であり、PEZAへの登録が認められると最長8年間法人税が免除され、その後も法人税は特別税率の5%となり、フィリピンの通常の法人税30%に比べ、まさに破格の優遇措置といえる。

 登録されている業種のトップは、製造業で、全体の半分を超える。中でもIT関連企業が急増している。2015年にPEZAに新規に登録された事業数は213件に上り、日本からの投資は63件で全体の約30%を占めた。

  1. 1.フィリピン投資優遇措置の全体像
  2.  フィリピンの投資優遇措置は、以下の3つの枠組みで整理できる。

  3. (1) 古くからある制度が整理された基本的優遇措置 【分野の指定】
  4.  ・BOI(投資委員会)の優遇措置(1987年オムニバス投資法)

  5. (2) 経済特区での事業活動に対して特別に付与される優遇措置 【場所等の指定】
  6.  ・PEZA登録企業への優遇措置(1995年特別経済区法)

     ・クラーク自由港登録企業への優遇措置

     ・スービック湾自由港登録企業への優遇措置

     ・その他の特別経済特区への登録企業への優遇措置

  7. (3) 多国籍企業誘致のための優遇措置 【組織形態の指定】
  8.  ・地域統括本部(RHQ)への優遇措置(1999年改正オムニバス投資法)

     ・地域経営統括本部(ROHQ)への優遇措置(同法)

     ・地域倉庫(RW)への優遇措置(同法)

    上記各制度における主要な税制優遇措置一覧

      BOI PEZA クラーク自由港 スービック湾自由港 地域統括本部 地域経営統括本部 地域倉庫
    法人税免除(登録から4~6 年間、最長8 年間まで延長可)          
    特別税5%(国税・地方税は免除)   〇(法人税免徐期間後)       
    関税や付加価値税等の免除
  9. 2.PEZAの優遇措置の具体的内容
  10. (1) PEZAへの登録が可能な業種
  11.  以下の該当業種の1つであり、かつ、製品の70%以上を輸出するか、または、海外顧客から総収益の70%以上を得ることが必要である。

     ・輸出製造業

     ・ITサービスの輸出

     ・観光業

     ・医療観光業

     ・農産業輸出製造業

     ・農産業バイオ燃料製造業

     ・物流・倉庫サービス

     ・経済特区開発・操業

     ・設備供給者

     ・公益事業

  12. (2) PEZA登録企業への主な優遇措置
  13. 法人税 パイオニア企業の場合:6年間(条件を満たせば8年まで延長可能)
    非パイオニア企業の場合:4年間
    事業を拡大する場合:3年間
    免除期間経過後も、総収益の5%の特別優遇税率
    関税 経済特区にもたらされる商品、資本設備、機械等にかかる関税等の免除
    埠頭税・輸出税・賦課金 免除
    付加価値税 0%
    その他 輸入・輸出手続の簡略化
    役員等への外国人の雇用の容認
    永住権取得要件の簡易化

     なお、パイオニア企業とは、以下の事業に従事する企業を指す。

     ・フィリピンで、まだ商業生産されたことのない財または原材料の生産

     ・商品の生産にフィリピンでは実績のない新規の設計、製法または工程が利用されている

     ・農業、林業、鉱業、及びそれらに関連するサービス業

     ・非在来型燃料の生産又は非在来型エネルギー源を利用する設備の製造

  14. 3.BOI(投資委員会)の優遇措置の具体的内容
  15. (1) 優遇措置対象となる分野 
  16.  BOI は、投資優先契約(IPP)を策定し、優遇措置の対象となる分野を以下のように特定している(2014年版IPP)。

     ・製造業(自動車、造船、航空宇宙産業、化学品、製紙用バージンパルプ、銅線及び銅ロッド、鉄関連等)

     ・農業関連産業

     ・漁業

     ・サービス業(集積回路設計、クリエイティブ産業、知識集約サービス、船舶修理、電気自動車用チャージステーション、航空機のメンテナンス、産業廃棄物処理)

     ・低価格住宅

     ・病院

     ・エネルギー産業

     ・インフラストラクチャ

     ・官民パートナーシッププロジェクト

     ・輸出用製品の製造

     ・サービスの輸出

     ・輸出事業者の支援に関わる事業

     ・ミンダナオ島イスラム教徒自治区への投資

  17. (2) BOI登録のための要件
  18.  ① 外資比率に関する要件

    議決権を有する株式の60%以上をフィリピン人が所有していること(ただし、パイオニア・プロジェクトに従事する場合、または、生産品の70%以上を輸出する場合は100%外資でもよい)

     ② 事業形態に関する要件(以下のうちいずれか一つを満たす必要がある)

     ・現行IPP リストに記載されている事業分野であること(ただし、生産品の50%以上が輸出向けであればリストに記載がない分野であっても可能)

     ・輸出商品を生産者から購入し、輸出業務に従事する計画であること

     ・技術サービス、専門サービスその他のサービスを提供する計画であること

     ・国産のテレビ番組、映画、音楽ソフトの直接または登録業者を通じての間接輸出に従事する計画であること

     ③ 資質に関する要件

     登録申請者が、健全かつ効率的に活動する能力及び国の発展に貢献する能力を有すること

  19. (3) BOI 優遇措置の概要
  20.  ① 一定期間の法人税の免除

     免除期間は以下のとおりである。

     ・パイオニア企業の場合:6年間(条件を満たせば8年まで延長可能)

     ・非パイオニア企業の場合:4年間

     ・事業を拡大する場合:BOI が設ける条件を前提に3年間、その拡大規模に比例した免税を受けることができる。

     ・BOIが定める低開発地域に所在する登録企業:6年間

     ② 課税所得の追加控除

    BOI登録企業は、資本設備額に対する労働者数比率が、BOI の定める所定の比率を上回る場合、登録から最初の5 年間、直接労働の増加に対応する労務費の50%を、課税所得から追加控除することができる。

     ③ 10年間を限度とした繁殖用家畜及び遺伝学的材料の免税輸入

     ④ 10年間を限度とした国産の繁殖用家畜及び遺伝学的材料の税額控除

     ⑤ 輸出製品及びその構成部品の製造、加工又は生産に使われる原材料、供給品、半製品の国内諸税相当額を免除

     ⑥ 埠頭税、輸出税、賦課金などの免除

     ⑦ 通関手続の簡略化

     ⑧ 5年間を限度として、監督者、技術者または顧問として外国人の雇用が可能

    以上