フィリピンにおける紛争解決

2016年10月更新

  1. 1.司法制度の概要
  2.  フィリピンの現行憲法は1987年に改正された1987年憲法である。

     この憲法に、司法権が1つの最高裁判所及び法律によって設立された下級裁判所に帰属する旨が定められている。

     そして、フィリピン法(BATAS PAMBANSA Blg. 129等)が、下級裁判所の種類、各裁判所の数、管轄地域、裁判官の人数等まで細かく規定している。

     裁判所の種類としては、日本の最高裁判所に相当する最高裁判所(Supreme Court)、高等裁判所に相当する控訴裁判所(Court of Appeals)が存在し、第一審裁判所(the Court of First Instance)としては、一定の金額以上の事件等を扱う地域裁判所(Regional Trial Courts)、一定の金額未満の事件等を扱う地方裁判所、少年事件や家事事件を扱う少年家庭裁判所(Juvenile and Domestic Relations Courts)、地域裁判所と同位でイスラム法典が適用されるシャリーア裁判所等が存在する。このうち地方裁判所は、首都圏裁判所(Metropolitan Trial Courts:マニラ首都圏にある地方裁判所)、地方裁判所(Municipal Trial Courts:1つの地方自治体を管轄とする地方裁判所)、地方巡回裁判所(Municipal Circuit Trial Courts:複数の地方裁判所を管轄する地方裁判所)にさらに分類される。

     これらの各裁判所の管轄の区分けは細かく、フィリピンの裁判所に訴訟を提起する際には、管轄裁判所の調査確定がまずは重要なステップとなる。

  3. 2.フィリピンにおける司法の機能不全
  4.  上記のように、フィリピンにおける司法制度は3審制が採られる等、日本のそれと大きな違いはなく、ある程度整備が進んではいる。

     しかしながら、長年に亘って、訴訟の遅延、長期化による司法の機能不全が問題となっている。

     訴訟の遅延の原因として、そもそもフィリピンの裁判手続が複雑であること、裁判件数の近年の増加、裁判所の人員の不足などが挙げられる。

     上記フィリピン法(BATAS PAMBANSA Blg. 129等)には、事件が提起されてから判決までの期限が定められている(最高裁判所で2年、合議体の下級裁判所で1年、その他の下級裁判所で3か月)が、これらの規定は有名無実化している。

     したがって、紛争の少しでも早期の解決を図るためには、訴訟の準備段階で主張立証を固めておく等事前の周到な準備が重要になる。

  5. 3.ADR(裁判外紛争処理)制度
  6.  上記の通りフィリピンにおいて訴訟手続は十分に機能していない状況ではあるが、他方で、ADR制度は確立されており、訴訟の機能不全を補っている。

     このADRは、控訴の段階でも利用することができ、この点は、ASEAN内でもフィリピンのみにある特徴である。

     フィリピンにおいて実施されているADR手続としては、仲裁及び調停がある。

     このうち仲裁手続は、訴訟外の紛争解決制度であるが、仲裁人が行う仲裁判断には、訴訟の確定判決と同一の効力が与えられるため、訴訟と同様に、紛争を終局的に解決する制度である。

     フィリピンには、主な仲裁組織として、法務省ADR局(DOJ ADR局)及び民間のフィリピン紛争解決センター(PDRCI)がある。仲裁手続の利用当事者は、当事者同士で定めた仲裁規則を採用することが可能である。また、国際標準基準として利用されるICC仲裁規則、またはUNCITRAL仲裁規則の適用を選択することか?可能である。

     次に、調停手続は、仲裁とは異なり終局的な判断を行う手続ではないため、海外に進出した企業が利用する場面はあまり多くないと思われるのでここでは詳細は割愛する。

    以上