ミャンマーにおける紛争解決

2016年12月20日更新

 本稿では、①ミャンマーに進出した日系企業(現地法人又は支店)が当事者となる紛争について、ミャンマー国内の裁判所を利用して紛争を解決する方法、②仲裁制度を利用する方法について概説する。

  1. 1.国内裁判所を利用した紛争解決
  2.  ミャンマーに居住する外国人であれば、ミャンマー国内の裁判所に訴訟提起ができる。法人も当事者となることができる。

     裁判所の管轄は、基本的に、被告の居住地若しくは就業地又は請求原因発生地を管轄する裁判所である。ただし、不動産関係訴訟は当該不動産の所在地を管轄する裁判所、人又は動産に対する損害賠償請求は不法行為地又は被告の居住地若しくは就業地を管轄する裁判所が管轄する。

     日本のように合意管轄を認める規定はない。

     提訴すると、訴状・召喚状の送達、被告からの答弁書提出、開示手続(Discovery)の実施、初回審問、争点整理、審理(Trial)手続(双方の主張立証)、判決と進んでいく。

     ここで開示手続が特徴的である。原告は、被告に対して、裁判所を通じて質問事項書を提出することができる。被告が当該質問に回答しない場合、被告は答弁をしなかったものと扱われて、被告に不利な判決が下される。

     提訴から判決取得までは、概ね1年以上の期間がかかると言われている。

     なお、ミャンマーでは上訴率がきわめて高く、敗訴当事者が上訴をする比率は控訴・上告のいずれともほぼ 100%であり、控訴審裁判所で手続が開始されてから判決が言い渡されるまでの期間は3 ヶ月~6 ヶ月程度、上告審裁判所での手続開始から判決言渡しまでの期間は約 6 ヶ月~1 年とのことである。

     強制執行について、被告の欠席による欠席判決(却下)となった場合、当該判決は強制執行の対象とならないことに注意が必要である。

     仮差押え手続について、相手方が占有する動産・不動産を保全する場合が多く、銀行預金に対する仮差押えは認められていない。

  3. 2.仲裁制度を利用した紛争解決
  4.  ミャンマーでは2016年に仲裁法が全面改訂され、その内容は、国際的にみても遜色がないものとなった。

     仲裁では、当事者が使用言語を自由に設定できる。

     仲裁人については、その人選も、人数も、当事者が合意により定めることができる。仲裁人の国籍は問われない。当事者の合意が調わない場合には、高等裁判所の長官が仲裁人を選任する。

     準拠法について、以下の場合には、当事者が自由に選択をすることができるが、それ以外の場合には、ミャンマー法が準拠法となることに注意が必要である。

     ・仲裁合意締結の際、当事者の一方の営業及び取引活動の場所がミャンマー国外である場合

     ・仲裁合意において、仲裁を管理又は運営する場所が当事者の営業地の国以外である場合

     ・主要な義務の履行地又は紛争に最も密接に関連する場所が、当事者の営業地の国以外の国である場合

     ・仲裁合意の対象とされる事項が、複数の国に関連することを当事者が明確に合意した場合

     外国仲裁判断の国内執行について、ミャンマーは2013年にニューヨーク条約の加入国となり、今般の新仲裁法の施行によって、国内法が整備された。今後、実際の執行事例の集積が待たれるところである。

    以上