マレーシア 資産の保有(不動産)

2016年12月14日更新

 マレーシアにおいて土地は基本的に州政府の管轄下にあり、土地の私的所有権は州政府から私人に対する土地の割譲という形で生じる。割譲形態は、永久割譲(Freehold)と、期間割譲(Leasehold)の2種類に分かれている。他方で、不動産事項に関する連邦単位での統一性確保の観点から、マレーシア連邦の土地法が制定されており、代表的な連邦法として西マレーシアにおける1965年国家土地法が挙げられる。以下では、①マレーシア土地制度の概要、②使用収益権原の概要、③登記制度の概要、④外国人の土地取得規制の概要を順次述べる。

1.マレーシア土地制度の概要

  1. (1) 永久割譲地・期間割譲地
  2.  マレーシアの土地は、永久割譲地と期間割譲地に分類されるが、いずれもトレンズ・システム(Torrens System)と呼ばれる登記制度の下、登記によって初めて効力が生じる。割譲地における土地所有権は登記所権利(Registry Title)又は土地事務所権利(Land Office Title)として発生し、証明書が発行される。

     期間割譲地における利用期間は99年間以下とされており、30年、60年、99年の利用期間設定例がみられる。利用期間が満了した場合で、州政府当局が期間の延長を承認しないときは、当該割譲地は州政府に復帰する。

  3. (2) 土地利用規制
  4.  マレーシア国家土地法上、前記割譲地は、一般的に①農業用、②工業用、③建設用という3種類の利用形態にカテゴリーされ、各カテゴリーに応じた土地利用規制が敷かれている。土地利用規制に違反した場合、州政府による当該土地の没収等のペナルティが課せられる。

     前記土地利用形態を変更することも可能であるが、州政府当局の承認が必要となる。従って、マレーシアで土地を賃借した上で建物を建築して事業を行おうとする場合、当該土地の利用区分の確認をする必要があること等には留意する必要がある。

2.使用収益権原の概要

 マレーシアにおいて土地の使用収益権原を獲得する方法には、不動産取得のほか、利用期間が3年以上の賃貸借(Lease)、利用期間が3年未満の短期利用権(Tenancy)、地役権(Easement)の設定といった方法がある。このうち、賃貸借期間の上限は、土地全ての賃貸借の場合は99年間、土地一部の賃貸借の場合は30年間とされている。

3.登記制度の概要

 マレーシアでは、登記によって土地の権利関係が終局的に確定されるため、基本的に、土地取引も登記によって有効となる。日本と異なり、不動産の譲渡契約を締結したとしても、登記がされるまでは所有権が売主から買主に移転しない。

 登記によって初めて効力が生じる取引には、譲渡、賃貸借、チャージ、地役権がある。他方、短期利用権及びリエン(担保権の一種)については、登記によらず効力が生じる。

4.外国人の土地取得規制

  1. (1) 州政府からの認可取得
  2.  前記のとおり、マレーシアにおいて土地は基本的に州政府の管轄下にあり、州政府が外国人による不動産取得の認可権限を有している。州政府は認可の交付条件を自由に設定することができるため、不動産取得にあたっては州政府との交渉が必要である。

  3. (2) EPUガイドラインに基づく土地取得規制
  4.  前記のほか、土地取得については経済企画庁(Economic Planning Unit)が全国一律の「不動産取得に関するガイドライン」を発行している。

     同ガイドラインでは、外国人又は外国企業が最低払込資本金の50%超を保有している外資企業を外国関係者と定義しており、外国関係者による不動産取得が下記の区分に該当する場合は、同ガイドラインに定める取得要件を満たしたうえで、EPUの事前承認を得ることが必要とされる。

    1. ①対象となる不動産取得
    2.  ・ 価値が2,000万リンギ(約5億1911万2000円)以上の不動産を直接取得する場合で、その結果ブミプトラ関係者(ブミプトラ個人、ブミプトラが支配する現地会社)および/または政府機関が保有する不動産の所有権が希釈化する場合。

       ・ 資産総額の50%超の不動産を所有する会社の非ブミプトラ関係者(非ブミプトラ個人、非ブミプトラが支配する現地会社)による株式の取得を通じた不動産の間接的な取得で、その結果、ブミプトラ関係者および/または政府機関の所有する会社の支配が変化することになり、かつ不動産の価値が2,000万リンギ(約5億1911万2000円)を超える場合。

    3. ②不動産取得条件
    4.  ・ブミプトラ資本が最低30%以上であること

       ・最低資本金要件(外資企業は資本金25万リンギ(約648万9000円)以上)の充足

     但し、外国関係者による100万リンギ(約2595万5000円)以上の不動産取得については、EPUへの申請は不要である。

  5. (3) MDTCCガイドラインに基づく土地取得規制
  6.  国内取引・協同組合・消費者庁が2010年5月に発行したMDTCCガイドラインによれば、流通取引事業を行うための不動産売買に関しては、MDTCCの事前認可を取得することが必要とされている。

以上