イスラエルにおける労務管理について

令和5年11月更新

1.はじめに

 イスラエルにおける労務管理は、複数の法律(最低賃金法、労働時間と休暇に関する法律、年次休暇法、疾病手当法、解雇手当法、解雇・辞職事前通知法等)によって規定されており、対象となる内容によってそれぞれの法律・裁判例・労働協約・拡張命令(extension order)などによって、定められています。

2.労働時間について

(1) 1日の労働時間は、週5日労働の場合には1日9時間、週6 日労働の場合には、1日8時間を超えてはなりません。さらに、1週間の労働時間は 合計で45 時間を超えることは認められていません。

 もっとも、法律では、労働者が1日8時間を超える時間外労働をした場合について、追加補償を認めています。この補償は、最初の2時間の時間外労働については時給の125%、それ以上の時間については150%です。安息日における労働の場合については、法律では、労働者に全労働時間に対して時給の150%を与えることになっています。

 また、賃金保護法では、賃金の支払い方法について規制を行っており、賃金は、勤務先または従業員の銀行口座に支払わなければなりません。そのため、金銭以外の支払いは禁止されており、雇用主は商品の購入を義務付けるなどして従業員の賃金の使い方を制限することもできません。さらに、時間外労働の支払いは、労働時間に応じて支払われる必要があり、月次の基本賃金の一部として支払うことはできません。

(2) また、労働者は、少なくとも 36 時間の連続する休息を含む、法律で義務付けられた休日を取得する権利を認められています。ユダヤの休日は安息日(金曜日の午後から土曜日の夜まで)にあたり、ユダヤ人以外は各自の伝統的な休日にこの休息を取ることができます。休日の労働を行う際には、許可が必要であり、従業員は時間外手当の支給を受ける権利が認められます。但し、法律に規定された特定の労働者には適用されません。

 年次休暇法においては、法律で定められた期間、労働者の有給休暇を保証しています。具体的には、最初の4年間の勤務期間は 14日間、5年目は16日、6年目は18日、7年目 は21日、7年目以上は1年あたり1日追加され、最大28日まで保証されています。

3.労働者の採用時の規制について

 イスラエルにおいては、雇用主は、複数の関連法に従い、各従業員に主要な雇用条件を記載した通知書を労働契約開始日より30日以内に、提供しなければなりません。雇用契約書にかかる記載に関する情報が規定されている場合は不要です。

 外国人従業員の場合は、外国人従業員法において、契約書は、従業員が理解できる言語を以て通知する必要があります。

4.契約終了時における規制について

(1) 複数の法令により、雇用主が、性別、人種、宗教、年齢、性的嗜好、障害などの差別的な理由で労働者を解雇することは禁止されています。従業員が職場での汚職を明らかにした場合についても、解雇は制限されています。

(2) また、雇用主及び労働者は、解雇又は退職の事前通知を行うことが法律で義務付けられています。事前通知期間は、雇用1年目は勤務月数ごとに1日、2年目は14日、3年目は 21日、3年目以降は1か月です。

 一方で、雇用主または労働者が事前の通知なしに雇用契約を終了した場合、法律は相手方に給与の1か月分に相当する金額を支払うことを義務付けており、当該金額の支払いをすれば、雇用関係を終了する権利を有することになります。

 もっとも、労働者が重大な規律違反に対する懲戒処分懲戒違反により解雇された場合、雇用主は事前に通知をすることや、代わりに賃金を支払う必要はありません。

(3) 退職金法に基づき、解雇された労働者は、勤務年数ごとに退職金として受け取る権利があります。ただし、労働者が重大な懲戒処分で解雇された場合には、かかる退職金は減額または拒否される可能性があります。

 一方で、労働者側から退職をする場合については、出産、重病、又は雇用条件の著しい悪化による退職など、法律の特定の規定のいずれかを満たさない限り、退職金を受け取る権利はありません。

 この点、労働者が死亡した場合については、扶養家族は退職金を受け取る権利がありますし、雇用主が死亡した場合においても、労働者は退職金を受け取る権利があります。

5.就業可能な最低年齢などについて

(1) 青少年の雇用については、青少年労働法によって規制されており、15歳未満の子どもの雇用は禁止されています。ただし、イスラエルでは義務教育期間中 (イスラエルでは10 年生まで)、子どもは見習いとしてのみ雇用できます。夏休み期間中14歳以上15歳未満の青少年については、比較的負担が少なく、健康に害を及ぼさない職種で雇用されることができます。場合によっては、労働大臣が、特定の雇用形態に対して追加の年齢制限を課す場合があります。

 青少年労働法は、雇用されている青少年の週40時間労働を定めています (成人の45時間の代わりに)。また、労働大臣の許可がない限り、夜間労働は禁止されており、雇用されている若者は、少なくとも18日間の年間休暇を取得する権利があります (成人の場合は14日間)。労働省は働く青少年に訓練プログラムを提供することが義務付けられており、雇用主は訓練に参加するために、その時間を月給から差し引くことなく、週に1日だけ当該青少年を解放する義務があり、また、雇用主は、すべての青少年従業員について書面による記録を保管する義務があり、この法律によって課された義務を履行しない場合には、刑事罰の対象となりえます。

(2) 青少年を保護するもう1つの法律として、徒弟法があります。この法律では、ある職業に従事する18歳未満の従業員については、すべて徒弟として登録することを義務付けています。各業種には、義務的な見習い期間など特定の訓練要件があり、これを満たさなければ従業員として認定されません。また、雇用主は徒弟法により、義務教育期間終了まで青少年を雇用し、適切な訓練と監督を保証する義務があります。

6.管轄について

(1) 雇用関係に関する全ての事項の管轄権は、すべて労働裁判所が有しています。また、労働裁判所の裁定はイスラエルの労働法の重要な先例の1つとして取り扱われています。

(2) 労働者は退職し、労働契約を終了する権利を有します。ただし、労働者の退職が、指定された期間働くという契約上の義務に違反する場合、労働者は、退職によって雇用主に生じた損害賠償責任を負う可能性があります。このような事例は少なく、証明するのが困難です。裁判所は雇用主に特定のパフォーマンス救済を認めません。つまり、裁判所は従業員に労働を強制せず、雇用主の唯一の救済は損害賠償です。

7.まとめ

 以上、イスラエルにおける労働法の概要を説明しました。もっとも、この記事は、一般的な事項をご説明したに過ぎませんので、個別具体的な事情については、弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めいたします。