インド 外資規制(2015年統合FDIポリシーに準拠)

  1. 1. 外資直接投資(FDI: Foreign Direct Investment)規制総論
  2. インドにおいては、一定の産業分野において外国投資が全面的に禁止され、又は一定の制限を課している。具体的な外国投資規制は、インド商工省(Ministry of Commerce and Industry)の産業政策促進局(DIPP: Department of Industrial Policy and Promotion)が都度発行するプレス・ノートによって規定され、前年度発行されたプレス・ノートは翌年の統合FDIポリシー(Consolidated FDI Policy)にまとめられる。

  3. 2. 具体的規制
    1. (1) 投資主体
    2. 以下の主体については、FDIポリシーの規制及びその他の法規制の下、インドにおける外国直接投資が認められている。

      • 外国企業及び外国人
      • 登録された外国機関投資家(FII: Foreign Institution Investor)
      • 登録された外国ポートフォリオ投資家(FPI: Foreign Portfolio Investor)
      • 登録された外国ベンチャー・キャピタル投資家(FVCI: Foreign Venture Capital Investor)
      • 有資格外国投資家(QFI: Qualified Foreign Investor)
    3. (2) 投資客体
    4. 外国直接投資は、上場・非上場を問わず、インドに登記されているインドの会社の資本に対して投資することが認められている。さらに、有限責任組合(LLPs: Limited Liability Partnerships)に対しても、一定の条件の下、政府の事前承認を条件に投資することが認められている。また、FVCIは、一定の条件に従い、Indian Venture Capital Undertakings(IVCUs)、Venture Capital Funds(VCFs)、その他の会社に対して投資することが認められている。

    5. (3) 投資を受けたインドの会社が発行可能な主な有価証券の種類
    6. 外国直接投資を受けたインドの会社は、普通株式(Equity Shares)、優先株式(Preference Shares)、転換社債(Convertible Debentures)を発行することができる。なお、上記の優先株式及び転換社債は、それぞれ全部強制転換条項付優先株式及び全部強制転換条項付転換社債を意味し、2007年5月1日以降に受領されたそれ以外の一部転換条項付、任意転換条項付等の優先株式又は転換社債は債務と見做され、ECB(対外商業借入れ)に関する規制が適用される。
      さらに、政府ガイドライン等の一定の条件に従って、外貨転換社債(FCCBs: Foreign Currency Convertible Bonds)、預託証券(DRs: Depository Receipts)を発行することも認められている。

    7. (4) 株式の発行・譲渡
      1. (a) 株式発行時期
      2. インド国外から通常の銀行ルート等を通じて金員を受領した日から180日以内に株式を発行しなければならず、180日以内に発行されない場合、受領された金員は直ちにインド国外の投資元に返金されなければならない。上記の場合、インド外国為替法違反と見做され、罰則の適用対象となる。

      3. (b) 株式発行価格
      4. FDIポリシーに基づきインド国外居住者に対して株式を発行する場合の発行価格は、以下の価格を下回ってはならない。

        1. a. 当該会社の株式がインド国内の公認の証券取引所に上場されている場合は、インド証券取引委員会(SEBI: Securities and Exchange Board of India)のガイドラインに従って算定される価格
        2. b. 当該会社の株式がインド国内の公認の証券取引所に上場されていない場合は、登録されたMarchant Banker又はインド勅許会計士が、国際的に容認されている価格算定方法に従って算定した株式の公正価格
        3. c. 優先割当による株式発行の場合は、インド居住者から非居住者への株式譲渡に適用されるインド準備銀行の価格ガイドラインに従った価格
        4. なお、インド会社法の規定に従ってインドの会社の設立時にインド非居住者が発起人としてその株式を引き受ける場合、その株価は券面額とすることができる。

      5. (c) 株式の譲渡
      6. FDIポリシー及びその他の法律等に従い、インド非居住者は、インド居住者又はインド非居住者が保有するインドの会社の株式を取得することが認められている。

    8. (5) 外国直接投資に必要な承認
    9. インド非居住者がインドの会社に投資する場合、その投資対象となる会社の事業分野によって、政府の事前承認が必要となる場合(政府承認ルート)とそのような事前承認が必要ない場合(自動承認ルート)の二つのルートがある。

      1. (a) 政府承認ルート
      2. 政府承認ルートによる外国直接投資は、外国投資促進委員会(FIPB: Foreign Investment Promotion Board)を管轄する財務大臣(Minister of Finance)の事前承認が必要となる。但し、投資総額が200億ルピーを超える場合は、内閣経済委員会(CCEA: Cabinet Committee on Economic Affairs)の事前承認が必要となる。
        いずれの場合も、下記の自動承認ルートと同様インド準備銀行に対する事後的な届出も必要となる。

      3. (b) 自動承認ルート
      4. 自動承認ルートによる外国直接投資は、上記のような事前承認は必要とされず、インド準備銀行に対する事後的な届出で足りる。具体的には、外国直接投資を受けたインド企業は、海外からの送金を受領した日から30日以内に、その金額の詳細をインド準備銀行の管轄事務所へ報告しなければならない。また、株式発行から30日以内に、AD-Category I Bankを通じてその詳細を所定のForm FC-GPRを用いてインド準備銀行の管轄事務所へ報告しなければならない。なお、インド非居住者とインド居住者間の株式譲渡の場合については、その対価受領日から60日以内に、その詳細を所定のForm FC-TRSを用いてAD-Category I Bankに提出しなければならない。

    10. (6) ダウンストリーム投資(Downstream Investment)
    11. ダウンストリーム投資とは、インド非居住者が所有又は支配しているインド企業による他のインド企業に対する投資を意味する。この場合、後者のインド企業が行う事業分野に関し、FDIポリシーに関する規制に従わなければならない。また、ダウンストリーム投資については、以下の条件に従う必要がある。

      • 当該ダウンストリーム投資について、産業支援事務局(SIA: Secretariat for Industrial Assistance)、産業政策促進局(DIPP: Department of Industrial Policy and Promotion)、及びFIPBへ、投資後30日以内に通知すること
      • 当該ダウンストリーム投資が取締役会決議等によって支持されていること
      • 株式の発行、譲渡、株価等が、SEBI及びインド準備銀行のガイドラインに従っていること
      • 投資元のインド企業が、ダウンストリーム投資に必要な資金を国外から調達すること
    12. (7) 外国直接投資が全面的に禁止されている分野
    13. 以下の分野においては、外国直接投資が全面的に禁止されている。

      • 宝くじ事業(政府・民間いずれが主宰する場合も含む。オンラインでの宝くじも含む)
      • 賭博・賭け(カジノ等を含む)
      • チット・ファンド(Chit funds)
      • ニディ・カンパニー(Nidhi company)
      • 譲渡可能な開発権(TDRs: Transferable Development Rights)の取引
      • 不動産業又はファーム・ハウス(Farm House)の建設
      • たばこ類及びたばこ代用品の製造
      • 民間企業に投資が開放されていない事業・分野(例:原子力事業、一定の外国直接投資が認められる鉄道事業以外の鉄道事業)
    14. (8) 外国直接投資が制限されている分野
    15. 以下の分野においては、外国直接投資割合及び政府の事前承認の有無等についての制限が規定されている。なお、下記事業分野に関しては、上記の他に関連法規、FDIポリシー上に別途規定されている条件(投資主体、投資額、その他)に従う必要があるものもある。

      1. (a) 農業
        1. ① 農業及び畜産業(上限100%/自動承認ルート)
          • コントロールされた条件の下での花卉園芸、養蜂、野菜又は茸の栽培
          • 種子及び植物性原料の開発・生産
          • コントロールされた条件の下での畜産(犬の繁殖を含む)、水産養殖
          • 農業及び関連する事業に関するサービス
        2. ② 紅茶農園(上限100%/政府承認ルート)
          • 紅茶農園(プランテーション)を含む紅茶事業
      2. (b) 鉱業
        1. ① 鉄及び非鉄金属の採掘及び探鉱(上限100%/自動承認ルート)
          • ダイヤモンド、金、銀、貴金属を含むがチタン等は含まない
        2. ② 石炭及び亜炭の採掘等(上限100%/自動承認ルート)
          • 発電、製鉄、セメント事業等に消費される石炭及び亜炭の採掘
        3. ③ チタン等の採掘及び製錬等(上限100%/政府承認ルート)
      3. (c) 石油及び天然ガス
        1. ① 油田・天然ガス関連事業(上限100%/自動承認ルート)
          • 油田・天然ガス田の探鉱、石油及び天然ガス製品の販売に関するインフラ事業、パイプライン、液化天然ガスの再ガス化、民間企業による石油精製等
        2. ② 公営企業による石油精製事業(上限49%/自動承認ルート)
      4. (d) 製造業
        1. ① 零細及び小規模企業(MSEs: Micro and Small Enterprises)保護のため留保されている製品の製造業(上限100%/24%までは自動承認ルート、24%超の場合は政府承認ルート)
        2. ② 防衛産業(上限原則49%/政府承認ルート)
      5. (e) サービス業
        1. ① 放送通信事業(上限74%/49%までは自動承認ルート、49%超74%までの場合は政府承認ルート)
          • 地上通信センター(Teleports)
          • DTH(Direct to Home)
          • ケーブル・ネットワーク(MSOs:国、州、地区レベルで運営している事業者)
          • モバイルTV
          • CS放送
        2. ② 上記以外のケーブル・ネットワーク(上限49%/自動承認ルート)
        3. ③ 地上波FMラジオ放送(上限26%/政府承認ルート)
        4. ④ 「ニュース及び時事問題」のTV番組のアップ・リンク(上限26%/政府承認ルート)
        5. ⑤ 上記以外の番組のアップ・リンク、又は上記の番組のダウン・リンク(上限100%/政府承認ルート)
      6. (f) 印刷・出版業
        1. ① 新聞等の発行(上限26%/政府承認ルート)
        2. ② ニュースや時事を扱う外国雑誌のインド版の出版(上限26%/政府承認ルート)
        3. ③ 科学技術雑誌、専門誌等の出版・印刷(上限100%/政府承認ルート)
        4. ④ 外国新聞のFAX版の出版(上限100%/政府承認ルート)
      7. (g) 民間航空業
        1. ① 空港(新規事業への投資)(上限100%/自動承認ルート)
        2. ② 空港(既存事業への投資)(上限100%/74%までは自動承認ルート、74%超の場合は政府承認ルート)
        3. ③ 定期便による航空輸送サービス、定期便による国内航空旅客輸送(上限49%/自動承認ルート)
        4. ④ 不定期便による航空輸送サービス(上限74%/49%までは自動承認ルート、49%超74%以下の場合は政府承認ルート)
        5. ⑤ DGCAの承認が必要なヘリコプター・飛行艇による輸送サービス(上限100%/自動承認ルート
        6. ⑥ 空港地上支援サービス(上限74%/49%までは自動承認ルート、49%超74%以下の場合は政府承認ルート)
        7. ⑦ メンテナンス及び修理、飛行訓練、技術訓練(100%/自動承認ルート)
      8. (h) 一定の宅配サービス(上限100%/自動承認ルート)
        • Indian Post Office Act, 1988に基づく事業等以外の宅配サービス
      9. (i) タウンシップ、住宅、一定のインフラの建設・開発(上限100%/自動承認ルート)
        • 建設開発プロジェクト(タウンシップの開発、住宅・商業施設、道路、又は橋梁、ホテル、リゾート、病院、教育機関、レクリエーション施設、都市及び地域レベルのインフラ、タウンシップの建設)
      10. (j) 工業団地(上限100%/自動承認ルート)
      11. (k) 衛星事業(上限74%/政府承認ルート)
      12. (l) 民間警備会社(上限49%/政府承認ルート)
      13. (m) 通信サービス(上限100%/49%までは自動承認ルート、49%超の場合は政府承認ルート)
      14. (n) 取引業
        1. ① 卸売業(上限100%/自動承認ルート)
        2. ② B to B電子商取引(E-commerce)(上限100%/自動承認ルート)
        3. ③ 単一ブランド小売業(上限100%/49%までは自動承認ルート、49%超は政府承認ルート)
        4. ④ 複数ブランド小売業(上限51%/政府承認ルート)
      15. (o) 鉄道インフラ(上限100%/自動承認ルート)
      16. (p) 金融サービス
        1. ① 債権回収会社(Assets Reconstruction Company)(上限100%/49%までは自動承認ルート、49%超の場合は政府承認ルート)
        2. ② 民間銀行業(上限74%/49%までは自動承認ルート、49%超の場合は政府承認ルート)
        3. ③ 公営銀行業(上限20%/政府承認ルート)
        4. ④ 商品取引(上限49%/自動承認ルート)
        5. ⑤ 信用情報会社(上限74%/自動承認ルート)
        6. ⑥ 証券市場におけるインフラ会社(上限49%/自動承認ルート)
        7. ⑦ 保険業(上限49%/26%までは自動承認ルート、26%超49%以下の場合は政府承認ルート)
          • 保険会社
          • 保険仲介業者(Insurance Brokers)
          • 管理業務代行業者(Third Party Administrators)
          • 調査業者及び損害評価業者(Surveyors and Loss Assessors)
          • 法に基づいて指定されたその他の保険仲介業者
        8. ⑧ ノンバンク金融会社(上限100%/自動承認ルート)
      17. (q) 製薬業
        1. ① 新規事業への投資(上限100%/自動承認ルート)
        2. ② 既存事業への投資(上限100%/政府承認ルート)
      18. (r) 電力取引所(上限49%/自動承認ルート)
        • Central Electricity Regulatory Commission (Power Market) Regulations, 2010に基づいて登録された電力取引所