カンボジアにおける投資優遇制度

2016年12月6日更新

 カンボジアにおける事業活動に対する主な優遇措置は、以下で定義される改正投資法において規定されている。本稿では、カンボジアの投資優遇措置の1.主要な根拠法令、2.主な要件及び3.優遇措置の主な内容について記載している。

 なお、投資優遇措置は、政策変更や予算等により変更されることが少なくない分野であり、具体的に検討する場合には専門家又は所轄官庁に最新の内容を確認することが特に重要であると思われる。

  1. 1. 主要な根拠法令
  2.  カンボジアにおける投資活動に対する一般的な優遇措置を定める主な法令として、投資法(1994年8月5日、法第03/NS/94 号。投資法改正法(2003年3月24日、法第NS/RKM/0303/009号)による改正を含み、以下「改正投資法」という。)、及びその主要な下位規範である改正投資法の施行に関する政令111号(以下「政令111号」という。)が存在している。

  3. 2. 優遇措置の主な要件
  4.  改正投資法が定める優遇措置を享受するためには、適格投資プロジェクト(QIP: Qualified Investment Project)としての認定を受け、改正投資法に基づく最終登録証明書を取得する必要がある。QIPとしての認定を受けるためには、政令111号の別表1の第2項において「優遇措置に適さない投資事業」としてリスト化されている事業(以下「ネガティブリスト」という。)のいずれにも該当しない必要がある。

     (1) ネガティブリストに記載されている投資事業のうち、投資優遇措置を受けることができない投資分野の概要は、以下のとおりである。

    投資優遇措置を受けることができない投資分野
    商業活動・輸入・輸出・卸売、小売(免税店を含む)
    水路・道路・空路による運輸サービス(鉄道分野への投資を除く)
    観光サービスの提供・旅行代理店・観光情報業・観光広告業
    カジノ・賭博
    銀行・金融機関・保険会社・証券仲介業を含む通貨・金融に関する事業
    ラジオ・テレビ・新聞・雑誌・映画・ビデオの製作・複製、映画館、スタジオ等を含む、メディア事業
    専門家によるサービス
    種の多様性・人の健康・環境に危険を及ぼす遺伝子組換え生物に関する事業
    自然林の木材を用いた木製品の製造・加工
    タバコ製品の製造
    三ツ星を下回るグレードのホテル
    100 室未満の客室のホテル又は30 戸未満の観光客向け宿泊施設及び10ヘクタール未満の観光客向けリゾート施設を有する複合観光センター
    ホテル、テーマパーク、スポーツ施設、動物園を含む50ヘクタール未満の複合娯楽施設
    駐車場
    倉庫業
    通信事業に対する付加価値のあるサービスの提供
    不動産開発業

     (2)  ネガティブリストに記載されている投資事業のうち、投資優遇措置のための最低投資額が定められている投資分野の概要は、以下のとおりである。

    投資優遇措置の付与に最低投資額が定められている投資分野 最低投資額
    全製品を輸出産業に供給する裾野産業 10万米ドル
    動物の飼料の製造 20万米ドル
    皮革製品及びその他の関連製品の製造
    金属製品の製造
    電気製品・家電製品・事務用品の製造
    玩具・スポーツ用品の製造
    自動車及びその部品・付属品の製造
    セラミック製品の製造
    30万米ドル
    食品・飲料の製造
    繊維産業向けの製品の製造
    衣類・繊維・履物・帽子の製造
    自然の木材を使用していない家具・備品の製造
    紙・紙製品の製造
    ゴム製品・プラスチック製品の製造
    清浄水の供給
    伝統的医薬品の製造
    輸出用水産物の冷凍・加工
    輸出用穀類・農作物製品の加工
    50万米ドル
    化学物質・セメント・農業用肥料・石油化学製品の製造
    近代的医薬品の製造
    土地の規模が1,000ヘクタール以上の自然観光事業、及び、自然観光事業用地の建設
    50床以上の一定の設備を有する総合診療所
    100万米ドル
    近代的なマーケットや商業センターの建設 200万米ドル
    工業・農業・観光・インフラ・環境・エンジニアリング・科学その他の事業に用いられる技能開発・技術・ポリテクノロジーのためのトレーニングを実施するトレーニング・教育施設 400万米ドル
    国際貿易展示センター及び会議場 800万米ドル

     (3) ネガティブリストに記載されている投資事業のうち、投資優遇措置のための最低面積等の条件が定められている投資分野の概要は、以下のとおりである。

    分類 投資優遇措置の付与に条件が定められている投資分野 条件
    農業 水田農業
    各種換金作物の生産
    野菜の生産
    1,000ヘクタール以上
    500ヘクタール以上
    50ヘクタール以上
    畜産 家畜飼育
    乳牛の酪農場
    養鶏場
    1,000頭以上
    100頭以上
    10,000羽以上
    水産 淡水養殖場
    海水養殖場
    5ヘクタール以上
    10ヘクタール以上
    その他 植林
    植樹
    野生哺乳類の飼育
    野鳥の飼育
    野生爬虫類の飼育
    1,000ヘクタール以上
    200ヘクタール以上
    100頭以上
    500羽以上
    1,000匹以上
  5. 3. 優遇措置の主な内容
  6.  改正投資法に定められた優遇措置の主な内容としては、(1) 法人税の免除又は特別償却、(2) 輸入税の免除、(3) 輸出税の免除がある。以下、順に紹介する。

  7. (1) 法人税の免除又は特別償却
  8.  QIPは投資優遇措置として、法人税の一定期間の免除又は特別償却の適用のいずれかを選択することができる。

     法人税の免税期間は、3年間に、①始動期間及び②優先期間を加えた期間であり、最長で9年間である。

     ①始動期間とは、最終登録証明書が発行された日以降、最初に利益を計上する年、又は最初に売上を計上してから3年間のうち、いずれか短い期間である。

     ②優先期間とは、プロジェクトの業種及び投資額に応じて、以下の表のとおり0年間~最長3年間まで定められる

    プロジェクトの事業分野 投資額又はプロジェクトの種類 優先期間
    軽工業 500万米ドル以下
    500万米ドル超
    2000万米ドル未満
    2000万米ドル超
    0年
     
    1年
    2年
    重工業 5000万米ドル以下
    5000万米ドル超
    2年
    3年
    観光業 1000万米ドル以下
    1000万米ドル超
    0年
    1年
    農業・農産業 短周期農業プロジェクト
    長周期農業プロジェクト
    1年
    2年
    基幹インフラ 1000万米ドル以下
    1000万米ドル超
    3000万米ドル未満
    3000万米ドル超
    1年
     
    2年
    3年

    特別償却は、製造・加工の過程において使用された新品又は中古の有形固定資産の価格の40%の金額について、利用することができる。

  9. (2) 輸入税の免除
  10.  QIPの種類に応じて、以下の物資について、免税輸入をすることができる。

    QIPの種類 免税輸入可能な物資
    国内志向型プロジェクト 生産設備、生産投入材、建設資材
    輸出志向型プロジェクト 生産設備、建設資材、原材料、中間材、副資材
    裾野産業プロジェクト 生産設備、建設資材、原材料、中間材、生産投入用副資財

     国内志向型プロジェクトとは、輸出を目的としないプロジェクトを意味し、輸出志向型プロジェクトとは、国外に製品を輸出するプロジェクトを意味し、裾野産業プロジェクトとは、製品の全部を輸出産業へ供給するプロジェクトを意味する。

  11. (3) 輸出税の免除
  12.  QIPは、一定の例外を除き、原則として輸出税の免除を受けることができる。

以上