カンボジアにおける撤退について

 令和3年4月更新

 カンボジアにおいて現地法人の既存の事業を終結し、その法人格を消滅させる形で撤退する場合には、原則として2005年に制定された会社法(2005年6月19日、法第 NS/RK/0605/019号。以下「会社法」という。)に定められた解散・清算に関する規定 に沿って手続を進めることになります。本稿では、現地法人の一形態であり実務上用いられることの多い非公開(私的)有限責任会社(以下「非公開会社」という。)の一般的な清算手続の概要を、会社法に基づき解説します。なお、企業の破産の場合の清算手続については、破産法(2007年10月16日。以下「破産法」という。)に基づく手続となります。これについては、本ウェブサイト国際コンテンツ「カンボジアにおける倒産処理」をご参照ください。

 なお、カンボジア投資開発委員会に登録されQIPを取得している法人の場合、別途、カンボジア開発協議会(The Council for the Development of Cambodia:CDC)に対する手続等が必要となる点には、ご留意ください。

1. 租税完納証明書の取得

 会社の解散届出書には、租税完納証明書を添付する必要があるため、税務当局による手続を完了しておく必要があります。

 租税完納証明書を取得するためには、税務当局による最終税務調査を受け、未納の税を完納する必要があります。最終税務調査は、全ての調査未了年度を対象として行われるため、一般的に6ヶ月以上の時間がかかり、実務上1年を超える場合も少なくないため、留意が必要です。

2. 任意清算・解散決議

 株式を発行している会社は、原則として、株主総会の特別決議により解散します。会社が2種類以上の株式を発行している場合には、全ての種類株主総会における特別決議が必要です。

 取締役又は株主総会における議決権を有する株主は、会社の任意清算及び解散を提案することができます。会社の解散及び任意清算が提案される株主総会の招集通知には、清算及び解散の条件を記載する必要があります。

3. 清算意図証明書の取得

 株主総会において提案された解散・任意清算が承認された後、会社は解散する意図を表明する書面を商業省に対して送付します。かかる書面の提出は、オンラインでも可能です。商業省の担当者がかかる書面を受理した場合、商業省は、解散意図証明書を発行します。解散意図証明書の発行以降も会社の法人格は存続するが、会社は、清算に必要な業務を除き、業務を停止しなければなりません。

4. 清算手続

 会社は、清算意図証明書が発行された後、直ちに、以下を行わなければなりません。

  • (ⅰ)知れたる会社債権者に対する解散する旨の通知
  • (ⅱ)2週間連続で、会社の所在地において発行・配布されている新聞又はその他の一定の刊行物における解散する旨を知らせる公告
  • (ⅲ)会社財産の回収
  • (ⅳ)株主に対して現物での分配を予定していない財産の処分
  • (ⅴ)全ての会社の債務の消滅
  • (ⅵ)会社の事業を清算するために必要なその他一切の行為

 会社は、会社債権者に対し解散する旨を通知し、会社債務の弁済などを行った後、会社の残余財産を各株主の権利に従って分配します。

5. 裁判所による監督

 商業省の担当者又は利害関係人は、会社の清算期間中いつでも、裁判所に対し、当該清算手続が裁判所の監督下で行われるように、申し立てることができます。かかる申立人は、商業省に対し、申立てを行ったことを通知しなければなりません。商業省の担当者は、裁判所に出廷し、自ら又はその弁護士により、裁判所に対し書類を提示することが認められています。

6. 解散証明書の取得

 上記の清算手続の終了後、会社は、商業省の担当者に対し、解散届出書を提出します。解散届出書の提出は、オンラインでも可能です。これを受領した商業省の担当者は、解散証明書を発行します。会社の法人格は、解散証明書に記載された日付において消滅します。

 なお、前述のとおり、会社が裁判所に対し破産を申し立てた場合には、上記の清算・解散手続は適用されません。

以上