カンボジアにおける不動産規制

2016年12月1日更新

 カンボジアにおいては、不動産に関する所有権は、カンボジア法人又はカンボジア国籍を有する自然人のみが取得できると憲法及び法律上定められているため、外国人・外国企業は、不動産を所有することができないのが原則である。では、外国人・外国企業は、いかなる形であれば、カンボジアにおいて不動産を取得することができるであろうか。本稿では、まず、1.カンボジアにおいて不動産所有権又は区分所有権を取得する場合の規律の概略を紹介し、次に、2.不動産を賃借する場合の規律及び3. カンボジアにおける土地コンセッションの規律について検討し、最後に、4.カンボジアにおける登記制度について概説する。

  1. 1. 不動産所有権又は区分所有権の取得
  2.  カンボジア憲法 (1993年9月24日、その後の改正を含む。) によると、カンボジアの土地を所有することができるのは、カンボジア国籍を有する自然人及び法人に限られる。ただし、「カンボジア国籍を有する法人」とは、①カンボジアにおいて登記され、②カンボジア国籍を有する自然人又は法人により、その持分の51%以上を保有されている法人を意味するため、外国人・外国企業の出資比率を49%以下に設定した現地法人をカンボジア側のパートナーとの合弁で設立すれば、不動産所有権を取得することが可能である。

     また、コンドミニアムの2階以上については、特別区分所有権の設定が認められており、以下の条件を満たす場合には、例外的に、外国人・外国企業であっても、コンドミニアムの区分所有権を取得することができる。

     ・ 専有部分の床面積の合計が、建物全体の床面積の70%を超えないこと

     かかる制限は、当該コンドミニアムの区分所有権を有する全ての外国人・外国企業の所有区分を合算して計算されるため、他の外国人・外国企業が所有する床面積を考慮する必要がある点には、注意を要する。

  3. 2. 不動産の賃借
  4.  外国人・外国企業が、カンボジア国内の土地を利用する権利を確保する方法としては、不動産所有権を有するカンボジア人・カンボジア企業から、当該不動産を賃借する方法も可能である。カンボジアの賃借権は、①期間を15年以上50年以下とする長期賃借権(永借権)と、②期間を15年未満とする短期賃借権が存在している。

     永借権は、賃貸人の承諾なく転貸・譲渡・担保権の設定が可能な物権的な権利である。その設定のためには書面による賃貸借契約を締結する必要があり、登記が第三者対抗要件となっている。また、永借権の期間は最長50年であるが、更新後の期間を50年以下として更新することも可能である。

     短期賃借権は、譲渡・転貸等には賃貸人の承諾が必要な権利であり、その設定は書面による必要はなく、当該不動産の占有及び使用・収益の継続が第三者対抗要件である。

     一般に、工場やプラント等の規模の大きな案件では永借権が用いられ、事務所・店舗の利用については短期賃借権が設定される傾向にある。

  5. 3. 土地コンセッション
  6.  土地コンセッションとは、管轄権を有する政府当局の裁量に基づいて作成された法的文書により創設される、①土地を占有し、②法定された権利を当該土地において行使することができる権利である。土地コンセッションは、国土管理・都市計画・建設省(the Ministry of Land Management, Urban Planning and Construction)に登録され、その利用目的に従って、占有・利用している限り、第三者に対抗することができる。土地コンセッションのための契約期間は、原則として最長99年間で、対象となる土地の面積は最大1万ヘクタールである。土地コンセッションは、一定の場合には、政府の判断により取り消される場合があるため、注意が必要である。実際に、近年、土地コンセッションに対する国民の反発を受けて、政府が土地コンセッションを取り消した例が存在している。

     土地コンセッションは、(1)社会的コンセッション、(2)経済的コンセッション及び(3)使用・開発・探査コンセッションに分類される。

     社会的コンセッションは、主として住宅建設や生計を維持するための耕作を目的として認められる権利である。これに対し、経済的コンセッションとは、以下の目的のために認められる。

     ① 集中的な農業や農業に関連する活動の発展

     ② 土地を開発する投資家の合意の形成

     ③ 農村地区の雇用増加

     ④ 経済的土地コンセッションプロジェクトにおける投資の奨励

     ⑤ 政府・州等 の収入の創出

     使用・開発・探査コンセッションは、公共の利益と国家の経済的・社会的目的を達成するためのインフラプロジェクトの実施を民間企業が行う際で、以下に関連する場合に認められうる。

     ① 発電・送電・配電

     ② 運輸設備

     ③ 水の供給と衛生設備

     ④ 通信・情報技術に関するインフラ

     ⑤ 観光プロジェクトに関する建造物

     ⑥ 石油・ガス関連インフラ

     ⑦ 下水、排水等

     ⑧ 廃棄物管理・処理

     ⑨ 健康・教育・スポーツに関するインフラ

     ⑩ 経済特別区に関連するインフラと社会的住宅供給

     ⑪ 農業関連インフラ

  7. 4. 登記制度
  8.  カンボジアでは、不動産所有権の権利変動は、登記簿に登記しなければ効力が発生せず、また、不動産所有権を登記することにより権利者として推定され、第三者に対抗できるようになるため、不動産取引の際には、登記簿を確認する必要がある。従って、カンボジアにおいて、不動産所有権を取得したり、不動産を賃借したりする場合には、その者が正当な土地使用権を有するか、担保権が設定されていないか等を登記簿に基づいて確認することが重要となる。

     不動産所有権の移転の登記は、不動産が所在する場所を管轄する土地管理局に対して、譲渡人と譲受人が共同して、書面で申請する必要がある。申請の際には、申請書の他に、登記原因を証する書面を提出する必要がある。登記が完了すると、所有権確認証明書の発行を受けることができる。

    以上